猫は必ず毛づくろいをしますので、体内に被毛が取り込まれます。全ての被毛が便と共に排出されるわけではないので、毛玉を吐く行動は自然なのです。
しかしさまざまな理由から猫が毛玉を吐かないことがあります。そういった場合は猫の健康を守るための対処が必要です。
猫が毛玉を吐かないのは病気だから?
毛玉を吐く頻度がそもそも低かったり、常に便と共に舐めとった被毛を排出できているのであれば毛玉を吐かなくても問題ないのですが、定期的に
毛玉を吐いていた猫が吐かなくなったとしたら、病気を疑う必要があります。
舐めとった毛玉を排出できず胃などの消化器官内に滞留し固まってしまっている状態は
「毛球症」という病気です。
治療方法は投薬ですが、症状が重くなると手術により開腹して毛玉を取り出さなければならない場合もあり、軽視はできません。
猫が毛玉を吐かない毛球症の症状
毛球症の初期症状としては、
元気がない、水分摂取量が減った、吐こうとしても何も吐けない、食欲の低下、便秘や下痢、お腹周りを触られるのを嫌がる、などが挙げられます。さらに病状が進行して食欲不振や嘔吐が続くと、脱水状態となってしまう場合があります。
また、毛玉が腸管に詰まってしまうと腸閉塞になりますし、さらに腸壁に穴が開いてしまうと腹膜炎という重篤な症状を引き起こすこととなります。これらの症状は猫の命の危険に直結します。
猫が毛玉を吐かないときに病院へ連れていくタイミング
猫によって個体差はありますが、
2日間様子が変であれば、動物病院へ連れて行きましょう。毛球症は軽視せず、早めに獣医師の診断を仰ぐことが重要です。
猫は自分自身で食欲をコントロールする動物ですので、1日くらい食事を摂らないこともあります。食欲をコントロールしているのか、それとも毛球症で体調が悪いのかを見極められるように、
普段から猫を観察しておきましょう。
前足を身体の下に折り込んで座る「香箱座り」を普段しない猫が、この姿勢で座っているときも要注意です。体調が悪いため身体を丸めている可能性があります。
猫が毛玉を吐かない毛球症を防ぐ方法
軽視してはいけない毛球症ですが、予防する方法はないのでしょうか。ここからは猫が毛球症にならないようにする方法をいくつかご紹介していきます。
ブラッシング
毛球症を防ぐにはこまめなブラッシングが効果的です。猫にブラシをかけて飲み込む被毛の量を減らすことで毛球症の予防になります。春と秋の換毛期には特に抜け毛の量が増えますので、ブラッシングも念入りに行いましょう。
ブラッシングは猫と人間のコミュニケーションツールにもなりますので、お気に入りのブラシを見つけてあげ、
楽しくブラッシングする習慣を身に付けさせましょう。
ブラッシングに慣れさせるには、まずは人間に触れられることに慣らし、次にブラシに慣らしていきます。日常の生活空間にブラシをさりげなく置いておき、猫が興味を持って近づいたらおやつをあげてみても良いでしょう。
猫がブラシそのものに慣れたら片手におやつ、片手にブラシを持って猫の身体に少しだけブラシを触れさせてはおやつを与え、ブラシが身体に触れる感覚に慣らしていきます。
焦らず、時間をかけて慣らしていくことがブラッシング習慣定着成功のカギです。
ストレスとなる要因の排除
猫は
ストレスを感じるとより熱心に毛づくろいするようになります。皮膚にトラブルなどがあるときも同様で、過剰に毛づくろいすることで多くの被毛が体内に取り込まれてしまうのです。
猫は繊細なので微細な環境変化にもとても敏感です。引っ越しのあとに体調を崩す猫が多いといわれるのも頷けます。
皮膚トラブルを防ぐためには徹底したノミダニ対策も効果的ですので、動物病院と相談したりさまざまな情報を収集するなどしてぜひ試してみてください。
その他猫が毛玉を吐かないときの対策
いつものように毛玉を吐いていないな、と感じたら、すぐにできる対策があります。毛玉を吐くように促すための生活上の工夫なども取り入れて猫の体調を管理してください。
オリーブオイルを飲ませる
猫の体調管理にオリーブオイルを活用してみましょう。
オリーブオイルは体内に取り込んでも腸で吸収されにくいので整腸剤のように活用することができます。
オリーブオイルが猫の腸壁に接することで潤滑油となり、毛玉の排出を促進する効果が期待できるというわけです。
与えるオリーブオイルは上質な
エキストラバージンオリーブオイルを選択し、ウェットフードなどに混ぜて与えるようにします。オリーブオイルは味に少し癖がありますので、猫が拒否するようなら量を調整して様子を見ます。
与える量の目安は成猫で小さじ2分の1~小さじ1程度です。オリーブオイルは脂ですので、与えすぎると膵臓に負担がかかる可能性もあります。少量から与え始めて様子を見ながら適量を把握するようにしましょう。
猫草を用意する
猫の毛玉対策として多く活用されているのが猫草です。猫草はイネ科の植物で、先端がスッと尖った長い葉っぱが特徴です。
猫が猫草をかじり取って飲み込むと、
葉っぱの先端の尖った部分が喉を刺激して吐き気をもよおし、毛玉を吐きやすくすると考えられています。猫草は草ですので食物繊維も摂取でき、排便を促進する効果も期待できます。
猫草はペットショップなどで手頃な価格で売られているので、ぜひ活用してみることをおすすめします。猫草は1週間ほどで枯れますが日光を当てるとまた新しい葉っぱが生えてくるのでコストパフォーマンスも良いです。
ただし消化器官の形成途中である子猫には消化不良や下痢、嘔吐の原因となることがあるので与えないようにしましょう。1歳を過ぎ、成猫となってから与えるようにしてください。
毛玉用フードやサプリメントも活用
オリーブオイルや猫草以外にも
毛玉用のフードやサプリメントも猫が毛玉を吐かないときの対策として活用できます。
キャットフードの銘柄の中には「毛玉ケア」や「ヘアボールコントロール」と記載されたものがあり、
それらのフードには食物繊維が多く含まれています。
食物繊維を摂ることによって排便が促されますので、体内の毛玉を便と共に排出しやすくなる効果が期待できます。しかし、これらのフードは嗜好性が低く猫が好まない可能性もあります。
そういった場合はフードは変更せず、
食物繊維を含んだサプリメントなどで排便を促すよう検討してみてください。サプリメントは嗜好性の高いものを含めさまざまな商品が販売されていますので、猫の好みのものが見つけやすいでしょう。
日頃のケアで猫が毛玉を吐かない状態を防ごう
猫が毛玉を吐かない状態が続くと
「毛球症」という楽観できない病に罹ってしまいます。毛玉を吐くタイミングは個体やライフステージによって差異がありますので、自分の猫の体調を細かく観察することが何より大切になります。
そして、毛玉を吐いていない場合は日頃のケアを見直したり、食事やサプリメントを検討するなどの他、躊躇せずに動物病院で診察を受けることをおすすめします。