猫のお腹のたるみ「ルーズスキン」とは?その役割を解説!
愛猫を可愛がっている時に、ふとお腹の皮がダブついているのが気になることはないでしょうか。また、猫が歩いている姿を見てダラーんとお腹の皮が下に垂れている様子を見ると、心配になってしまう方もおられることでしょう。当記事ではこのような猫のお腹の皮がダブついている体の特徴「ルーズスキン」について解説しています。
猫の「ルーズスキン」とはお腹のたるみのこと!
猫のお腹は、触られることを嫌う重要な部位なので、飼い主にはあまり触らせません。しかし、猫のお腹のたるみは、触るととても気持ちいいのです。 飼い主としてはダイエットを始めた方が良いかな?と心配になるかもしれません。でも、猫のお腹のたるみは、もしかしたら肥満が原因ではないかもしれません。
では、この肥満が原因ではないとしたらなぜお腹がたるんでいるように見えるのでしょうか。猫のお腹のたるみは「ルーズスキン」と呼ばれるもので決して異常ではなく、猫の体の特徴のひとつとされています。
この特徴は年齢・体型を問わず見られるものです。とはいえすべての猫にあるわけではなく、一部の猫にしか見られないのも興味深い特徴です。 特に子猫の時は、お腹が平らなので、皮膚が緩むことはありません。
しかし、どの種類の猫にも一匹一匹それぞれの個性もあるため、ルーズスキンがほとんど見られない場合もあります。 一見飼い猫にルーズスキンがないように見えても、きちんと必要なスペースを確保しているので、自分の猫にはないのではと心配する必要はありません。
猫の「ルーズスキン」の役割
猫のルーズスキンは、肥満からくるものではなく、実は猫の体を守るための重要な役割を担っているのです。ここでは、猫の体に備わっているルーズスキンの役割について解説します。
役割①俊敏に動くため
ご存じのように、猫は高いところにジャンプしたり、高速で走ったりと、瞬く間に駆け抜けることができます。 そんな動きをするときに、皮膚がはみ出さないようにお腹の皮膚に余裕を持っているのではないかという説があるようです。
確かに猫は「ニャン体動物」と表現されることもあるほど体がとても柔らかく、私たち人間では考えられないような動きをすることができます。 その動きに対応するために、猫には骨や筋肉だけでなく皮膚もあることを考えると、ルーズスキンはごく自然な構造だと言えるでしょう。
役割②急所を守るため
猫にとってルーズスキンは、大きなケガや内臓の保護にも役立つ、とても重要なものです。これはどういうことかというと、たとえば猫同士がケンカをしたときのことを考えてみましょう。
たとえお腹を噛まれても体が直接傷つかず、攻撃によるダメージが少なくなるように、ルーズスキンが緩衝材として働いているのです。 特に野良猫の場合、内臓に傷がつくと短時間で命にかかわることもあるので、体を守るためにはとても重要な役割を担っていると言えるでしょう。
大型ネコ科のライオンやトラも下腹部がたるんだルーズスキンを持っているので、胃を攻撃されても内臓にダメージが届きにくく、血管や内臓、重要な器官を保護していると言われています。
役割③お腹を保温するため
猫はもともと温暖な地域に生息していたため、寒さにはあまり強くありません。猫の体を温めるには、お腹を温めるのが効果的と言われています。 猫の場合、お腹は毛でしっかり覆われていますが、実は体の中で最も冷えに弱い部分です。
お腹が冷えると、猫によっては下痢や便秘、食欲不振を起こすことがあります。 冷えによって腸の消化吸収能力が弱まり、腸管免疫力が低下して全身の免疫力が低下する可能性も指摘されています。
そのため、重要な臓器が集中しているお腹を温めることが、冷え対策として重要です。猫のお腹のたるみも、自分のハラマキのように保温に一役買っているのかもしれません。
役割④たくさん食べるため
現在、猫はペットとして飼われているものの、その祖先は野生種の猫で、今でも砂漠地帯に生息していることが分かっています。そして、ネコ科の野生動物は日々狩りをしながら暮らしています。
しかし、彼らの狩りはいつも成功するわけではありません。つまり、生き残るためには、成功したときにできるだけたくさん食べて、体に蓄えがある状態でないといけません。
そのような目的でルーズスキンが発達してきたと考えられています。皮膚に十分な余裕があれば、お腹を膨らませて十分な食糧を蓄えることが可能なのです。
猫の「ルーズスキン」と肥満を見分ける方法
猫の体にルーズスキンはつきものですが、実は別の問題が潜んでいる可能性もあります。例えば、もしお腹の皮を軽くつまんで肉感があるのなら、ただ太っているだけの可能性は十分にあります。 肥満の猫の腹部には脂肪がたっぷり蓄えられているため、触った時に皮膚の感覚ではなく比較的しっかりとした張りを感じることができるでしょう。
ただし、猫の特徴だからと油断していると、気がついたら肥満になっていたということもありえます。肥満の猫は、お腹がぽっこりしているだけでなく、首周りなどにも脂肪がついています。 肥満は、糖尿病や皮膚病、口内炎、下部尿路疾患など、猫にとって非常に多くの病気を引き起こす原因となるため、健康的な体重を維持することが大切です。
猫の「ルーズスキン」についてのよくある疑問
猫は生まれつきルーズスキンを持っているわけではなく、成長して大きくなるにつれて徐々にできてきます。ここでは、一般的によくある疑問に回答します。
疑問①オスとメスどちらにできやすい?
一般的に、ルーズスキンはオス猫よりもメス猫の方が目立ちます。メス猫はホルモンの関係で目立ちやすくなるようです。とはいえ、メス猫は妊娠や出産の際にお腹周りの皮膚が伸びることがあります。
また、出産後もたくさんの子猫たちに一日中おっぱいを上げることで皮膚が引っ張られることもあるでしょう。そのような皮膚のたるみはルーズスキンとは違いますので注意しましょう。
疑問②子猫にもできる?
ルーズスキンは、猫が1歳を過ぎてから見られることが多いようです。子猫は一般的に、お腹が大きく膨らんで張りがあります。 これは、人間の赤ちゃんがふくよかであることや、人間が年齢とともに痩せていくことと似ています。
また、年齢が上がると、皮膚のゆるみも大きくなり、目立つようになります。もちろん、お腹が膨らんでいない子猫もいます。
疑問③ルーズスキンができやすい猫種は?
ルーズスキンはどの猫にでもあるというわけではありません。猫種によって、多少違いがあるようです。 ルーズスキンが出やすいのは、日本でもよく見かけるアメリカンショートヘア、小さな斑点模様が美しいエジプシャンマウ、豹のような毛並みのベンガル、筋肉質でがっしりしたピクシーボブなどです。
これらの品種を持つ猫は、他の猫に比べてルーズスキンになりやすいと言われています。こうした猫に共通する特徴は、短毛でがっしりしていて運動量が多いことです。
アメリカンショートヘア以外の猫も、骨格が大きく、足が長く、運動神経が良く野性的であるため、猫の中でも運動神経が良く、のびのびとした躍動感のある猫種と言えるでしょう。 また、大事な部分を守ろうとする性質も強く残っており、ルーズスキンができやすい理由の一つかもしれません。キャットショーでは、ルーズスキンの状態によって高得点が与えられることもあるそうです。
疑問④ダイエット後にできやすい?
今まで肥満だった猫がダイエットをした後、お腹の皮膚がたるみ、ルーズスキンのように見えることがあります。 これは、人間のダイエット後に皮膚がたるんで見えるのと同じで、伸びた皮膚が十分に収縮できないために起こります。 したがって、余分な皮膚を外科的に取り除くことはできないので、これはダイエットの結果として受け入れるべきでしょう。
「ルーズスキン」は猫の特徴の1つ!
以上、猫のお腹に見られるたるんだ皮膚ルーズスキンについて解説してきましたが、いかがでしたか? ルーズスキンのある猫は、ちょっとカッコ悪く見えるかもしれませんが、実はワイルドで頼もしい猫ということが分かっていただけたのではないでしょうか。
猫にとってはとても重要な役割を担う体の機能であり、生来体に備わっている機能としてのルーズスキンを治す必要はありません。
むしろ猫にとって有難いさまざまな役割を果たしてくれるということで、安心することができるでしょう。 しかし時には肥満によるお腹のたるみや、病気によるお腹の張りの場合もあるので気をつけたいところです。
そのお腹が果たしてルーズスキンなのかそうでないのか、一度チェックしてみてしっかりと見極め、もし肥満であればダイエットを検討するようにしましょう。